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手越の家のチャイムを押すと、泣き腫らした目をした手越が出てきた。
「なにしにきたの、……」
手越が面倒くさそうにわざとらしく頭をかいた。
「謝りたくて……、」
「昨日のこと……?」
「全部…っ…」
「………」
手越は何も言わずドア越しに僕をのぞき込んでる。
「あの、ね……手越。昨日……ごめんね。僕は……錦戸くん……に」
「…………錦戸くんに愛されていいよね、まっすーは」
「て、……手越は言ったよね、好きな人に愛してもらないって……僕だって、同じ……」
「……まっすーは、山下くんにも錦戸くんにも愛されてんじゃんか……。」
「違うの……本当の、好きな人……ずっと好きだった人……に、僕、嫌われて……苦しくて……っ、謝りたくって…」
「……まっすー?」
「……僕、本当は、手越がっ……」
好きだって、言ってしまおうか。
もう隠す必要もなくなったんじゃないか。
僕の体はとっくに汚れきって。
手越に愛されるはずもない。
だったら、愛されないなら、もういらないから。
最後に想いだけ伝えてしまおうか。
「……好き、だったっ……ごめ、ごめなさっ……」
「……っえ……」
「…手越は……っ、錦戸くん、錦戸くんって……悔し、くて、寂しかった……っ!
でも、手越には、幸せになってもらいたくて、いっぱい我慢してっ、なのに、なんでっ……こんなことに、なっちゃったんだろうね……ごめんね……っごめんなさっ…」
「……」
気がついたら涙が溢れてた。
アスファルトの地面に涙が一粒たれて、色濃く染み込んでいく。
「まっすー……、帰って」
「ごめ、ね……ごめ、……」
「帰ってよっ……」
手越が泣きはらした目をさらにはらすように泣き出した。
「…っ、手越……ごめ、ね……ばいば、い……」
手越の言う通り帰ろうと、手越に背を向けて歩き出す。
「まっすー、もう、…友達じゃないからっ……!!」
後ろから上ずった手越の声が聞こえた。思わず足を止めて振り返る。
「……っ、ごめん……」
僕はただ謝ることしかできなかった。顔は不思議と悲しみにあせてなくて、感情を押し殺すように笑っていた。
錦戸くんに抱かれて、手越に嫌われて、山下くんに逆らって、残ったのはなんだろう。ぼろぼろになった僕の体だけ。
こんな僕を手越が愛してくれるわけ無い。
それなら、もういいや。
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