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そろそろコピーも済んだかな…様子を窺いながら開けたドアの先には誰もいなかった。
何を期待しているんだかーー
さっさと準備を片付けてしまおうとポケットにしまった青い輪っかをもう一度人差し指にはめて並べた用紙に手を伸ばしかけた。
コンコンコン。
「すみません、遅くなりました」
ノックの音がして待っていた声が聞こえれば、収まっていた鼓動がまた暴れ出す。
「普段コピーは任せっぱなしのせいで手こずりました」
照れたように話す顔に見惚れてしまう。
「ありがとうございました」
彼のコピーしてきた用紙からは温もりを感じる。
「俺も手伝いますよ。二人でした方が早いでしょ?」
脱いだ紺地のスーツを椅子の背にかけて拒否出来ないくらい爽やかに微笑んだ。
大きいテーブルに置いたコピー用紙の束を順番に取って、最後にまとめてホチキスを留めていく。
私の靴の音、河合さんの靴の音、紙の擦れる音、まとめた紙をテーブルで整える音、ホチキスで留める音。
重なるほど近づく二つの影。
ぶつかる指先と触れる肩先。
最後の一部をホチキスで留めるのを見届けて声をかけた。
「河合さん助かりました。コーヒー淹れましょうか?」
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