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高校を卒業してこの街を出たという昌さんの娘さんの、愛美さんが待ち合わせに指定してのは、百貨店の前の大通りが一望できるガラス張りのコーヒーチェーン店。 郊外にあるドライブスルーは利用したことがあるけれど、一面がガラス張りになっているここは初めて。 ガラス張りの窓ガラスからは冬の日差しが暖かくて寛ぎやすいサウンドも受け付けられないほどの緊張のせいで朝から胃腸は悲鳴を上げている。 約束の時間よりも早く着いてしまって、カフェラテは温くなっていた。 「柳澤さん?」 トレイを持って私の前に立つスラリとした体型の女性に、動揺を悟られないようにユルリと頭を下げた。 確か10歳くらいしか年齢差がないはずだけど、立場の優越はそれに比例していない。 「先日はお電話で失礼しました。立河の娘の愛美です。…初めまして」 「柳澤典子です。こちらこそわざわざご連絡頂いて、ありがとうございます」 「お待たせしましたか?」 羽織っていたライトグレイのコートを脱いで微笑む表情に昌さんの面影を探す。 「いいえ」 そっとカップに口を付ける愛美さんに微笑み返して、彼女が醸し出す洗練された雰囲気に気圧されていた。 「こんな形になって何ですが、私は柳澤さんと一度お話をしたいと思っていました」 互いにまっすぐに向き合うことになった今日、今年買った洋服でコーディネートした自分をそっと褒めた。
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