【18】

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目を開けた世界は、現実。 汗の粒を流して、ネクタイを緩めただけの匠と 腰まで捲りあげたスカートの中をさらけ出す私。 薄ら寒い私の部屋に、昌さんはいない。 「帰ってよ」 痺れて力の入らない手を伸ばして、剥いだ下着を掴んでスカートを下ろす。 「……一人にして、お願い」 フローリングに私の影が落ちる。 手帳に縋る馬鹿な女だと、見限ってくれて構わない。 【6.30ーーあれが早くノンコと別れてくれたらいい】 【7.6ーー河合から連絡が来た。ノンコに会える。】 【7.21ーー別れたと言ったのに。俺よりもノンコを思う気持ちの強さが憎い】 【8.16ーーこのまま死んだら、ノンコはどうするだろう。 死ねない。死にたくない】 【9.27ーーノンコが見舞いに来た。いいんだ。これでいい。生きているうちにもう一度会えて良かった】 昌さんの手帳の文字が、昌さんの声になって頭に響く。 「帰ってよ、早く……」 私は、また許されないことをしようとしていたの。 「明日、仕事は……」 「行くわよ!!行くから、もう私のことは放っておいてよ」 匠、ごめん… でもね……これ以上優しくしないで。 【ノンコは俺を忘れて、河合を選ぶかな】 私、昌さんを忘れたりしないから。
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