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医療系の仕事だと一目に判るクリーム色の上下にネイビーのカーディガンにスニーカー姿。ネックホルダーには【柳澤典子】の文字。 こんな形で再会するとは考えていなかったから、熱を持つ頬を手の甲で押さえた。 「また来週の火曜日にお迎えに参ります」 久しぶりだとか、元気だったとかそれなりの挨拶を期待した私に軽く会釈をして長身の彼は身を翻して家の中へと入っていく。 「ありがとうございました」 立ち尽くす私の目の前でカラカラカラと軽く音を立てて玄関の引き戸は閉まった。 グラグラする思考は車のクラクションによって引き戻されて、門扉に掲げてある【河合】の表札を確認してから駆け足でライトバンへと戻る。 滞在時間は数分。ハザードを消したライトバンは登って来た道を引き返して、小高い丘の住宅地を背中にして下っていく。 私にとって、この3年は立ち直る為に無我夢中の日々だった。 昌さんのことを思い出す日々の中で、匠と過ごした日々を懐かしむことも同じくらいあった。 自分のことだけで精一杯だという理由で匠の好意を利用してたくさん傷つけた。 当時のスマホは壊してしまったから今さら連絡先もわからない。 それに。匠はもう私とは関わりたくないのかも。 冷たくなっていく指先でネックホルダーに巻き付けている腕時計を弄びながら、西陽の煌めきに目を細めた。
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