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それからも変わらず、佐藤さんは火曜日と金曜日に〈和み〉を利用し続けている。 「そうなのよ。職場が変わってねぇ、家の近くに勤めてるのよ」 「まぁ、貴女幸せねぇ」 利用者同士の会話に花を咲かせていた佐藤さんは、帰り支度を済ませるとニコニコとして私の介助で送迎車の後部座席に乗り込んだ。 ここ数回の火曜日は佐藤さんの娘さんは仕事で不在で、その代わりに自慢のお孫さんが出迎えている。 そして今日は火曜日。 自慢のお孫さん、匠が出迎える日。 住宅街を走るライトバンは定刻通りに佐藤さんの自宅前に着けた。 「婆ちゃんおかえり」 インターフォンを鳴らす前に引き戸を開けて玄関から出てくる匠の笑顔は柔らかい。 「ただいま、匠」 背中の曲がった佐藤さんはサササッと私と匠の間を通り抜けて、挨拶もそこそこに開けっ放しの引き戸の向こうに姿を消していく。 「あ、佐藤さん」 おいてきぼりの私を見て、匠は苦笑いを誤魔化すように顔を逸らす。 「あ、あの……さ、さようなら」 拳を口元に当ててチラ見する匠に頭を下げた。 「はい。…また」 ピシッと身体の脇に手を着けて15度腰を折る姿は、やっぱり営業マンだと思う。 小走りになって門扉を閉めるとハザードを点けたままの車に乗り込んだ後も、匠はこちらを向いたままだった。
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