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白いRVの助手席側のドアを開けるとシートにはビジネスバッグや資料の束が占領していた。 「どうぞ、乗って下さい」 車内の散乱具合に驚いて動けずにいる私に目もくれず、運転席から伸びた手は助手席の荷物を後部座席へと移す。 助手席に乗り込んでから足元に落ちていた封筒に気づいて手を伸ばした。その封筒には覚えがある。 「健康診断の結果?」 会社が毎年実施している病院の封筒で、ある年齢から検査内容は細かくなって、結果の入った封筒はしっかりとした厚みを感じるようになる。 「まぁね。…この歳になると色々と注意されることが多くなる。毎年、運動不足と休肝日の指摘されてるよ」 右手だけでハンドルを回す匠は通りを走る車に意識を集中しながらも口元は緩んでいた。 「そうなの?意外ね。あぁ、懐かしいなぁ。私もそうだった」 砕けてきた口調にホッとしたのもつかの間、私の手から封筒を奪うとアッと言う間に後部座席へと飛ばした。 車は帰宅ラッシュの県道へと合流して動かなくなっていく。車高のあるせいで3つ先のの赤信号まで見渡せる。 「へぇ、懐かしい……そう思えるくらいには回復しているんだ?」 動けない車の列の中で逃げも隠れもできない。匠の声はハッキリとしていて至近距離からの視線も感じる。 「うん、まぁ…。いつまでも思い出ばかりに浸ってばかりいられないでしょ」 助手席側のガラスには私の顔の後ろに匠の顔が映る。
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