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「そういうのとは……ちょっと違う、のかな?」 最後の一口を口に入れ、ゆっくりと咀嚼する私に匠は眉を僅かに寄せる。 薄味だけど芯まで味を染み込ませた風呂吹き大根は美味しいんだけど、相変わらず容赦なくまっすぐに見つめてくるから…なかなか喉を通らない。 ふう、っと小さく一息ついて、覚悟を決めて下唇をひと舐した。 「昌さんとは…亡くなる少し前に会うことが出来て、きちんと二人で話もしたの。 昔の面影なんて無くて…嫌でも現実を受け入れるしかなかった。 て、手帳を…見たでしょ?」 上目遣い見ると当時を振り返っているのか、匠は僅かに瞳を揺らしてから小さく何度か頷きを繰り返した。 「昌さんの深くて強い愛を知って、怖くなったの。…可笑しな話でしょ? 当の本人はもういないのよ。 なのに、手帳から迫る強さに押しつぶされて…。行き違いを正したくてもその術はないし、そもそも無駄なのよね」 「無駄とか、 言うなよ」 表情を歪めて顔をそらす、その仕草に笑いが溢れた。 「そうね、ごめんごめん。 昌さんが亡くなっていることを時々忘れてることもあるんだけど… 不思議と寂しさや不安からは解放されていて、今は安心っていうか…生きていく強さに変わってる。 私が拘っていたのはツマラナイモノだったのね、きっと」 私の話を黙って聞いてくれる匠は複雑な表情を浮かべていた。
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