855人が本棚に入れています
本棚に追加
/452ページ
草木も眠る静かな時間に一人窓辺に立つ。
丸い形の大半を闇に隠して、西の空には片手でも簡単に折れてしまいそうな薄い月が浮かぶ。
その繊細なラインと闇に放つ光が
あの人みたいだと思う。
いつだって夜空を見上げるときは
思い通りにならない苛立ちや
口に出来ない不安を抱えていた。
傍にいられなくても
声をきけなくても
想いが色褪せることなどなかったーーー
月の光のように紡いだ恋は
いつまでも心の底に横たわる。
私たちは何割を分かり合えたのかな。
折れそうな危うい輝きは、東の空が明るくなる頃に音もなくそっと姿を隠した。
最初のコメントを投稿しよう!