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出来上がった料理をテーブルに並べ終えた頃、カチャンと鍵を置く音が聞こえてリビングのドアが開く。
「ただいま」
「パパァー!!」
帰宅した匠が飛びつく宗を抱き上げてからホッと一息着いたような笑顔を私に向ける。
「おかえりなさい」
「うん。ただいま」
食卓に並ぶ料理に視線を流して微笑む。
「美味そう。サラダいつもと違うヤツ?」
宗にせがまれて匠の注意が料理から逸れた。そのまま寝室へと連れ立っていく親子の後ろ姿はよく似ている。
「ふふふ、そうなの」
匠が着替えている気配を気にしながら
「今日はコールスローにし、た……の」
味噌汁を温め直している途中でハッと息を飲んだ。
“コールスローサラダが食べたい”と微笑んだのは……匠ではなかった。
はらはらと舞う花びらに包まれるように思い出したのは、目尻に皺を作って首を少し傾ける笑顔。
「ママも座って。さぁ食べよう」
宗の座る椅子の隣に匠が腰を下ろす姿を視界の端に捉えながら、カッと熱くなる耳元。
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