私の生きる道

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向かいに座る二人が食べる姿に笑顔を見せながら内心、にわかに信じられない自分の中の現象に箸を持てずにいた。 「……あ、美味いなコレ」 試行錯誤を繰り返して味付けの隠し味に練乳を使うようになったのは昌さんの好みなのに。 匠は迷わず一番に箸をつけたコールスローサラダの味に何度も頷いている。 宗がまだ小さいし匠も外食を好まないから、レシピを検索しては家で作るようになっていて今日のコールスローサラダは久しぶりに作る…ぐらいの感覚だった。 「宗も食べてごらん。ママの作る料理はいつも美味しいよ」 なかなか箸を持てずにいる私を気にかけるでもなく匠は食事を進めていく。 不思議なもので、夫婦になった私たちは恋人だった頃のように互いの些細な仕草にいちいち反応を見せなくなった。 生活の中心は宗で、自分のことは常に後回し。急な発熱や嘔吐すれば夫婦の会話はそのことばかり。 もしも。 もしも、向かいに座る人が昌さんだったなら…… ノンコどうしたの?と私を見つめてくれるのだろうか…………
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