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私は小さい頃から要領が悪かった。
質実剛健をモットーとしている母は、事あるごとにイソップ物語の【蟻とキリギリス】を引き合いに出して説教をしてきた。
地味に堅実に毎日毎日コツコツと努力する。母の教えを守り生きてきた。そうすることで安心していたし、結果は自ずとついて来ていた。
違うと感じたのは、高校を卒業して大学に入ってから。
堅苦しい校則から解き放たれて自由と個性を手に入れた大学1年。
私立高校出身の色気のある同級生にも馴染めず、自由を謳歌する同級生にはついていけなかった。化粧を覚えて恋愛を満喫していく友人たちを遠巻きに見つめた。
結局、代返や授業のノートを頼まれてツマラナイ高校時代の延長を過ごしていた。
私の就職活動の頃は超氷河期と呼ばれていて新卒者を採用する企業は少なかった。それは私たち文系の女子大生も例外なく、厳しい就職活動だった。
大した就職活動もせずに親や親族の縁故で要領良くそこそこの企業に就職していく友達。私の手元に届くのは不採用の通知ばかり。
地道に真面目に過ごした4年は何だったのか…。蟻のつもりが、私はキリギリスだったのか…。
就職先の決まらない私を見兼ねたゼミの教授の紹介で今の会社に就職できたのは卒業間近な2月の終わり。しかも短大卒扱いだった。
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