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無限回廊
深夜に目を覚ますと、天井にはりついたなにかが私をじっと見下ろしている。
全身毛むくじゃらの、巨大な猿に似た生き物が、首だけを傾げて私をみている。
恐ろしくてたまらず、わたしは枕もとの電話をとる。
なぜかどうしても番号がおせず、そのうち電話は勝手にリダイアルをはじめてしまう。
もうどこにかかっているのかもわからない。
わたしは汗ばんで震える指で電話をにぎりしめる。
数回の発信音のあと、プツプツという雑音に混ざって、変声機を通したような奇妙にいびつな声が聞こえてくる
「いま2時35だね。あと5分したらお前を殺しにいくからね」
私は夢中で電話をきる。もうどのボタンを押しているのかもわからない。
そしてそこで目が覚める。
目が覚めるとやはり、天井にはりついたえたいの知れない獣がじっと私を見下ろしている。
私は怖くてたまらない。
動機が激しい。
ほとんど泣きながら枕もとの電話をとる。母に電話したい。誰でもいい。こんな時間に電話をしたら迷惑なのはわかっている。でもわたしはあれに殺されてしまう。
けれど、どうしても番号はおせず、電話は勝手にリダイアルをはじめる
「あと5分したら、お前を殺しにいくからね」
同じ声が同じ事をいう。
そしてわたしは全身汗びっしょりになって目が覚める。
もう何度くりかえしただろう。
私はねることをあきらめて台所にいく。
薬を倍量のんでパソコンにむかっていると、ほどなく睡魔がやってくる。
けれど寝るとあいつがやってきてしまう。
あたしはあれに殺される。
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