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お風呂から出てきてTシャツ一枚だけ羽織り、バスタオルで髪の毛をゴシゴシと力強く吹いていたお母さんは、テーブルの上に放置していた箱からタバコを一本取り出して口にくわえる。
「それで、今日はどんな悩みごとだ?友達とケンカしたとか?」
「ううん、そんなんじゃないよ……」
小さな傷が無数に入った銀色のオイルライターを手に取り、タバコに火を付けて一呼吸。
大きく吐き出された煙がアパートの天井へと昇って、臭いが一気に充満していった。
「そう、じゃあ恋の悩みだろ」
「こ、恋って……」
どういう訳か、恋という言葉に心臓が跳ねてしまっている私。
「おっと、意外と的外れじゃなかったか」
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