第10話 軋み始めた回廊

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「キスは?もう寝た?」 「いやいやいや!だ、だから全然そんなんじゃないって!それにそういうのは付き合ってからするものだし……」 お母さんはタバコの灰を灰皿に落としながら無邪気に微笑んだ。 「付き合わなくてもキスする事もあるし、抱かれる夜もあるもんよ女は。まぁあたしはそんな軽い女じゃないけど。とりあえず美羽は純粋なままでいてくれてちょっと安心した」 「もう……」 「けど……一つだけ約束しなさい」 お母さんは最後に大きくタバコを吸って煙を吐き出し、火種を灰皿に押し付けて消して笑顔を消す。 「あたしみたいな女にはならないで。あんたはちゃんと幸せな人生と、お手本になるような母親になりなさい」
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