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玄関のドアを開けた先には、桂とは打って変わって、満面笑顔の保臣(やすおみ)が、
「いよ!」
片手をあげて立っていた。
「あがっていいんだろ?」
「……」
「おじゃましまーすっ」
ドアが開かれたのをこれ幸いといわんばかりに、保臣はそそくさと家の中に入り込む。
「な、遊ぼうぜ」
そして慣れた、まるで我が家かのような振る舞いで、ドカリとソファに座った。
「お前と遊んでいる時間などないっ」
拒絶の言葉を吐きつつも、動作は乱暴だがグラスにペットボトルの茶を注ぎ、出してしまうのは彼の真面目な性格故か。
「だって久々の部活休みの日なんだぜ。これが遊ばずにいられるかっての」
「だったら俺じゃなく他の奴と遊べ」
「やだ。俺は桂と遊びたいの」
保臣は出されたお茶をいただきますと、一口飲んだ。
「それ飲んだら帰れ。俺はお前と遊ぶつもりはない。あとな、窓を叩くのはやめろ。近所迷惑だ」
桂はソファに戻らず、食卓の椅子に腕を組み、足を組んだ格好で座る。
「つれないなぁ~。それが幼なじみに対する台詞?」
「自分勝手な乱暴者にはふさわしい言葉だろ」
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