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 小学六年生になって、ますます彼との距離が延びた。  それが“嫉妬”だと分かったのは中学に入ってからだ。それまでは、保臣を遠くから見る度に起こる、訳のわからない胸の痛みに、ただ耐えるだけだった。  嫉妬の種類は、二つあるといえた。一つはクラスメイトへの嫉妬。そしてもう一つは、保臣へ対する嫉妬だった。  しかしそれが分かると同時に、桂はあることも学んでいた。  それは“冷静”になることだった。  いくら努力しても、彼の運動神経にはかなわない――それなら、“勉強”はどうだろう。  いくら保臣と仲が良くても、所詮彼の友人たちから見れば、自分も“彼(保臣)と親しいだけの友人”なのだ。自分の周りに人が集まることはない――それなら“本”でも読んで独りを楽しもうとしよう。  “今の自分”があるのは、“保臣の存在”という影響があったためといっても過言ではない。  ……だがどうやら、勉強と読書というスタイルは驚くほど自分と合っているといえた。  保臣とは正反対といえる能力だった。  だからこそ、保臣に負けるわけにはいかないのだ。
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