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ある晴れた日の日曜日。
「……」
桂(けい)は二階の自室で、読書にふけっていた。
中学校時代にすっかり趣味となった読書は、今年高等学校に入学してからというもの、更に没頭度が増し――実の所現在の高校を選んだ理由が、他の学校と比べて、格段に図書の蔵書に力を入れているから……とは、さすがに親には言えなかったが――特に用事のない休日は、ほとんど本と共に過ごしていることが多かった。
「……」
本を左手に目線は文章を追ったまま、動きがきく右手で、離れた所に置いてある卓上のマグカップを手に取る。
「……」
あくまで文面に視線を落としながら、マグカップの中身のものを啜ろうと、傾けたその時。
ドンッッドンッッ 『おーいっ!』
“ブバッ”
心臓に悪すぎるほどの激しい音が突如、部屋に鳴り響き、桂は少々含んでいたものを、マグカップの中に噴き戻してしまった。
ドンッッドンッッ 『いるんだろー!』
机の左隣にある窓が、外側から強い力で叩かれている。
「っ……」
それまで穏やかな海原のごとき桂の心中はしかし、一気に荒れ狂った、巨大な波がたつ嵐へと変様した。
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