1.

2/13
202人が本棚に入れています
本棚に追加
/22ページ
 ある晴れた日の日曜日。 「……」  桂(けい)は二階の自室で、読書にふけっていた。  中学校時代にすっかり趣味となった読書は、今年高等学校に入学してからというもの、更に没頭度が増し――実の所現在の高校を選んだ理由が、他の学校と比べて、格段に図書の蔵書に力を入れているから……とは、さすがに親には言えなかったが――特に用事のない休日は、ほとんど本と共に過ごしていることが多かった。 「……」  本を左手に目線は文章を追ったまま、動きがきく右手で、離れた所に置いてある卓上のマグカップを手に取る。 「……」  あくまで文面に視線を落としながら、マグカップの中身のものを啜ろうと、傾けたその時。  ドンッッドンッッ 『おーいっ!』  “ブバッ”  心臓に悪すぎるほどの激しい音が突如、部屋に鳴り響き、桂は少々含んでいたものを、マグカップの中に噴き戻してしまった。  ドンッッドンッッ 『いるんだろー!』  机の左隣にある窓が、外側から強い力で叩かれている。 「っ……」  それまで穏やかな海原のごとき桂の心中はしかし、一気に荒れ狂った、巨大な波がたつ嵐へと変様した。
/22ページ

最初のコメントを投稿しよう!