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「だってさ、お前がカギかけるのが悪いんだぜ。きちんと開いていたら、もっとスマートに出来たのに」 「それはお前が……」  言いかけて、桂はやめた。 「……どうしたんだよ。顔が赤くなってるぜ」  こちらを見る保臣の目が皮肉に笑う。 「赤くなってなど、ない……」  しかし不覚にも動揺してしまった桂の視線は、完全に保臣とは反対の方向に向いていた。  桂と保臣は、同年齢の幼なじみである。ついこの間の中学生までは、ほとんど毎日のように顔を合わせていた。  部屋の行き来もそうだった。お互いの家の隙間が1メートルもなく、足をのばせば充分に進入することが出来た。桂の家と保臣の家は共に分譲型の一戸建てで、不動産会社が同じせいからか、なんなのか不明だが、ほとんど形状も部屋の間取りも似ている建物なのだ。  二人が生まれる前から両家の親交はあったようで、そんなわけで桂と保臣はそれぞれの母親が相談し合った末に生まれた、まさに計画出産による、幼なじみになることを運命付けられた間柄だった。  しかし今まで生活サイクルが嫌でも同じだった二人に転機が訪れる。  そう、高校進学である。
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