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だがいずれも私立であったため、保臣はこれをあっさりと断った。
そして苦手な勉強をこの時ばかりは一所懸命に頑張って、彼もまた自分が第一希望とする高校へ見事合格したのである。
「無名なやつがいきなり入ってレギュラーとるっていうの、カッコ良くね!?」
どこかのマンガにあるような展開だが、そこは現実。実際にはそんな簡単に物事は進まない。保臣が選んだ野球部は、部員数50名からなる大所帯で、なんと三軍制となっており、ただでさえレベルの高い部員ばかりなのに、その中から抜きん出るのは、並の努力では無理といっていい。大きな口をたたいていた保臣は、三軍からのスタートとなった。経験者といえど、公式戦に出てもせいぜい二回戦どまりの無名校からとしては当然の結果だった。
ところが二ヶ月ほどたったある日。
「二軍昇格したぜ」と、余裕すら伺える笑みを浮かべて、彼が自室の窓越しに報告してきた。
「おめでとう。やったな」――桂も素直に喜んだ。
けれども桂は、これは当然の結果であると確信していた。
自分は見てしまったのだ。
彼の本気の表情を。
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