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 いつも明るく、中学時代の部活動も、回りより動きが良いというのは見ていて分かっていたが、遊び、楽しんでいるといった感じで、真面目さは伺えなかった。学校に入る前、幼かった頃も、ちょっと無謀で危なっかしくて、でも明るくて愉しい奴という印象だけであった。  それが、あんな表情をするのだ。それは、一つのことに真剣に打ち込む、“男”の顔だった。  高校受験の時の必死さとはまた別物だった。  それから、桂は憑かれたように毎夜、こっそりと物陰に隠れて保臣の練習する姿を見に行くようになった。  彼の姿を見ながら、桂はいつしか自分の中に芽生えていた、彼に対するある感情の存在に気付く。  小さい頃、それこそ幼稚園に入る前から、活発的に動き回る保臣の後ろに必死に食らい付きながら、桂は彼と遊ぶことを楽しんだ。純真な気持ちは小学校四年生まで続いた。  小学校高学年になり、ある程度の自我と節度を認識した頃、スポーツ万能でクラスメイトから人気のある保臣を、少し遠目から見るようになった。保臣と自分は幼なじみでいくら仲がよかろうと、保臣を慕って彼の周りに集まった子たちと必ずしも自分が仲良くなれるわけではなかった。
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