誘われるように誘いかける

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「早くない?俺もいつもよりちょっと早いけど。いつもこんなに早いの?」 卓哉は浮上した気分で声が上擦っていないかと懸念しながら言葉を発した。 今朝は相変わらず不機嫌な妻の麗香と出来るだけ接触の機会を避けようといつもより早く家を出てきたのだ。 そのおかげか最近ちょっと気になっている可愛い女の子に会えた。彼女は朝日の中でキラキラ輝いて見える。 「今日は特別。」 「ん?」 「上村さんに会いたくて早く来ちゃいました。」 「え?」 「冗談ですよ。そんなにびっくりしないで。」 莉乃はイタズラな笑顔を向けた。 「勤務報告書の締めが終わってなくて。」 莉乃はそういったがそれは口実だった。 「そっか。大変だね。残業とかあるんだね。」 「今はあまり無いですけど。時間内に出来ないことも無いです。だから半分くらいは口実ですよ。上村さんに会いたかったの。」 卓哉はなんて返事していいか戸惑っていた。 「返事に困るようなこと言ってごめんなさい。でも朝から上村さんに会えて嬉しい。今日はラッキーデーかも。」
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