花の守護

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 何もかも騙されたような気分で外に出ると、日常の雑音にまぎれ、電話のように耳に近い声が、ごく普通にあいさつをしてくる。  もちろん、そばには誰もいない。  その激しい違和感に、いくらも歩かないうちに立ち止まった。 「うあ、ちょ、おれ、気持ち悪い」  大丈夫か、と遠い声がする。  そいつらがどこから見て発声しているのか、その距離感がまったく掴めない。 「好意的でいいじゃないか。私は緑を殺すのも仕事だから、誤解されやすくてね」  広希が急にまじめな声になった。 「殺す?」  聞き違いかと思ったが、訂正してはくれない。 「一緒に来てくれるかな」  広希がハイビスカスに笑いかけると、周囲の声がぶつっと消えた。  手品を見せられたあとのような疑問を解くために、昭人はうなずくしかなかった。
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