花の守護

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 そこは、道路の拡張工事のために一本だけが取り残された樹木のそばで、音のとまった現場だった。  数人の作業員が状況の変化をながめてきたが、期待されていないのは視線でわかる。 「ま、見ての通り、あの木が伐れなくて工事が中断している。伐ろうとすると普通じゃない怪我人や病人が出るそうだけど、なぜかはもうわかるだろ?」  ハイビスカスと同じように、しゃべるヤツなんだろう。 「はあ」 「って、どうでもいいけど君、やる気のない返事はどうにかしようよ」 「現状を把握するので精一杯だっ」 「……君の頭の中って、まだそこいらをウロついてるのかい」 「広希」  突然、強面の中年男が声をかけてきた。  あいまいな色の作業服には、深いシワが縦横にくっきりと見える。
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