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「誠志さん。お待たせしてすみません」
「いや、私も着いたところだ。その子が藤倉昭人くんだね」
広希がやけに嬉しそうな顔でそうです、と返事をした。
「はじめまして。私は茅野誠志。名字は違うが、連城家の者だ」
「あ……、どうも」
後頭部に手をあて、とりあえず笑顔を返すと、ものすごい目で広希が睨んできた。
「なってないよ、それ。お辞儀は腰から上をしっかり前に倒す」
「おれは就職したわけじゃねえっ」
「そうなのか?」
茅野誠志と名乗った中年男が聞き返してきた。
「や、あの、連城家……ってことは、あんたも聞こえる人ですか」
茅野が眉をひそめる。
「説明不足だな、広希」
「申し訳ありません」
自然な動きで頭をさげた。
「さっさと片づけてしまうから、しっかり教育してくれ」
「はい」
茅野の後ろ姿にもまだ頭を下げている。
「お偉いさんか。あんたみたいな大人がヘコヘコ頭さげてみっとも、……いっ」
唐突に、緑色をしたものが頬をかすめた。
広希は何か気づいたような視線だけをくれた。
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