【26】Good-bye and good-bye.

13/30
前へ
/782ページ
次へ
「生きて…行けるよ……。」 その言葉を聞いた瞬間、 心が絶望した。 冬馬が私にそんな事を言うなんて…。 冬馬がまるで私の知らない人みたいで……。 私は冬馬のはだけた胸から顔を離した。 そして冬馬の上に跨ったまま泣いた。 ポタポタ…、 ポタリ…。 冬馬は私の涙を身体で受ける。 「…指輪は杏奈が持ってて…。 それお守りだし…、 嫌だったら捨ててくれて構わないけど、 俺には返さないで…、 返されても行き場がなくて困っちゃうし、 とにかく杏奈が持ってて……。」 冬馬の決意は固い…。 もう、無理なの? 「…一度も、抱いてくれなかった……。」 冬馬は私の言葉にピクッと身体を揺らした。 冬馬の切れ長の瞳が私を見つめる。 美しいその容姿で見つめる。 私の王子様…。 ずっとそう思っていたのに、 態度に出してあげられなかった…。 「抱きたかった…。 杏奈が壊れるくらい抱きたかった…。 好きな女を抱きたくない男なんかいるかよ…。」 冬馬は熱のこもった目で見つめる。 獣みたいにユラユラと…。 そのまま襲ってくれて構わないのに……。 私はずっと待っていたのに……。 届かなかったね……。
/782ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1173人が本棚に入れています
本棚に追加