【26】Good-bye and good-bye.

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そして2年後。 春。 私は横山第二高校の教師を5年間勤めて、 この春に異動になった。 笹原は2年前に高校を卒業して、 その後もずっと私に会いに来ていたけど、 この異動で当分は会いに来る事もないだろう。 笹原の卒業式の時に香織さんに会った。 その時の彼女の表情はとても柔らかかった気がする。 きっとあれが本来の彼女の姿なんだと思った。 武内は医者に成るべくして大学の医学部に進んだ。 何でも尊敬してる医者がいるんだとか…。 佐野先生はまだ横山第二高校で教師をしている。 私はといえば…、 1週間前から女子高の教師だ。 もちろん陸上部の顧問になった。 笹原のように飛び抜けた才能はないにしても、 彼女たちは磨けば光る原石の集まりだ。 すごくやり甲斐がありそうで今後が楽しみで仕方ない。 この1週間ずっと浮き浮きしていた。 新しい学校。 新しい出会い。 私は車を運転しながらラジオから流れてくる歌に耳を傾けた。 クロウの曲。 2年前に冬馬が私を想って作った歌。 私との別れを決意して書いた歌詞。 『I'll be right here.』 (いつもここにいるよ。) うん。 冬馬はずっと私の中にいるよ…。 私は女子高の駐車場に車を停め、 エンジンを切った。
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