【26】Good-bye and good-bye.

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部屋に入ると、 「先生、好きです…。」 そこには愛の告白をしている女子生徒の姿と、 その女子生徒に抱きつかれているカウンセラーの姿があった。 「……。」 私はその場に動けず固まった。 そのカウンセラーは私を横目でチラッと見ると、 女子生徒の肩を掴んで自分から引き剥がした。 「ゴメンね…。 僕には心に決めた人がいるんだ。 だから君の気持ちには応えられない…。」 何だこのクールビューティーな男は…。 バタバタと走り去る女子生徒。 私の横をその生徒が通り過ぎる瞬間、 彼女の目にキラリと涙が見えた。 「可哀想…。」 私はボソリと呟いていた。 そのカウンセラーはゴホッと咳払いをしてから私と真正面から向き合った。 私はジャージの裾をギュッと掴んで握り締める。 暑くもないのにベタベタと手の平が湿っていた。 「初めまして…。 この春からこちらの学校で教鞭を執る事になりました。 高橋 杏奈と言います。 英語を担当しています。 よろしくお願いします。」 私は淡々と言葉を述べてからペコッと頭を下げた。 そのカウンセラーは無言で私をマジマジと見つめていた。 上から下までじっくりと食い入るように見つめる。 額にジワジワと汗が浮き出してくる。 私は緊張していた。 彼の表情からは何も読み取れない。 私はこの男の第一声がどんな言葉なのかがすごく気になった。 「…初めまして。 藤沢 荒野です。 この学校のスクールカウンセラーをしています。」
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