【26】Good-bye and good-bye.

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フワフワの猫っ毛。 形のいいアーモンドアイ。 繊細そうで綺麗な男。 私たちは暫しの間そこで見つめ合っていた。 スローモーションのような時間の中で、 私は我を失いかける。 でも、 「今日は挨拶だけなので…、 私はこれで…、失礼します。」 振り切る思いで彼に背中を向けた。 そしてドアに手を伸ばして、 パシッ、 突然彼に手首を掴まれた。 え? 私は振り返る。 目をパチパチとさせた。 「カウンセリング…、受けてみませんか?」 「は?」 「ですからカウンセリングを受けてみませんか?」 私は彼の瞳を見つめた。 一体何を考えてるの…? 「…すみませんが、 生徒を待たせているので…。」 私はそう言って彼の手を引き剥がしにかかった。 だけど彼はググッと握る手に力を入れる。 「…痛っ、」 私が顔を歪ませた瞬間、 カチャ…、 彼は空いてる方の手でドアの鍵をかけてしまった。 「何する、、、」 「メール!!」 私の抗議を打ち消す声。 「最後にメール送ったろ?」 「…知りません。」 「次会ったら離れる自信がないって送った!!」 「知らないわ…。」 彼が私に近付く。 私はジリジリと後ずさる。 トンッ、 ドアに背中が当たって、、、 「…杏奈。」 荒野に名前を呼ばれた。
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