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「杏奈、君の事教えて?」
何度目の逢瀬でそれを口にしたのか、俺は忘れてしまった。
「藤沢くんは一体私に何を求めてるの?」
「荒野って呼んでくれなきゃ答えない。」
「はあ?」
杏奈は不愉快そうな顔をする。
そんな些細なやり取りが俺には嬉しくて幸せで、
俺は彼女にキスをする。
杏奈は無表情でそれに応える。
部活終わりの放課後、誰もいない教室で杏奈と会う。
それが俺たちの日課になっていた。
ハアと杏奈がため息をつく。
ズキン、
俺はそれに傷付く。
だけどこの時間は俺には必要で、大切で、やっとできた杏奈との接点。
「ねえ河邑とはどうなってんの?
マジで付き合ってんの?」
俺は杏奈に質問する。
「うん、付き合ってるよ!
すごくラブラブ!」
杏奈は左手で顎を擦りながら決まってこう答えた。
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