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「ねえ、最近こうちゃん部活終わった後何してるの?
いっつもダッシュでどこかに行っちゃうじゃん。」
果穂が俺の渾身の力作、ペンギンの彫刻を見ながら聞いてきた。
「…あー、色々とあるんだよ。
忙しーの俺は。」
「1年生はもう文化祭の準備始まってるの?」
この立体アートすげーだろ的な俺の視線を無視して果穂は喋り続ける。
「あー、うん、そんな感じかな。」
そうなんだ。
そろそろ文化祭の時期だ。
来週から居残りで準備に追われる日々が始まる。
だから教室での杏奈との密会ができなくなってしまう。
俺は正直焦っていた。
このまま杏奈との関係がうやむやになって、前のような距離感に戻ったらどうしよう…。
いや、前より酷い状態になるのは確実だ。
どうしたらいいんだ……。
俺は思い悩む。
「このスズメ大きくない?」
そんな俺に果穂が作品を突っつく。
は?どこにスズメ?
「これペンギンだからっ!!」
イラッとするわ果穂め!!
でもマジでどうにかしないと。
そう思いながら俺は壁掛け時計に目を向けた。
あーー、早く杏奈に会いたい…。
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