目覚めの朝

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さあ朝ごはんにしようと風音が明るく大きな声で言うと、子供たちが一斉に家の方へ駆けだした。お腹減ったーやら、もうくたくただよーやら、それぞれ無邪気な子供らしい言葉を口にしながら、つかれた体と減ったお腹を癒す朝食が待つ家の食卓を目指すが数人の子供たちはヒナキのジャケットの裾や袖をいじらしくくいくいと引っ張り。 「ひな兄ひな兄」「はやくいこー」「いこー」などと急かしてくる。ヒナキは困り顔ながらもわかったわかったと目を爛々と輝かせ、そわそわしている彼、彼女らを宥めて引っ張られるがまま歩を進めたが、そこで風音がちょいと待ちなとヒナキに対してぴしゃりと言う。 突然投げかけられた鋭い言葉にヒナキや、ヒナキを先導していた子供たちは体が強張り立ち止まってしまった。 「雛坊、また物騒な得物は身に着けてないだろうね。ウチはそういうの持ち込み禁止なんだ、分かってる筈だけど」 警告の意をはらんだ鋭い視線が注がれたが彼は呆れたような表情で頭を振った。 「全部バイクに収納してあるし、鍵もかけてある」  乗ってきていた軍用バイクには、軍用と言うにふさわしくところどころに銃や刃物などの武器、ツールを保管するアタッチメントが取り付けられている。そこには彼が愛用している、風音の言う物騒な物が差し込まれたり置かれたりしているため、それぞれ鍵がかけてあり、その鍵を彼はポケットから出し軽く胸のあたりまで持ち上げ見せ、風音を納得させるに至る。 「うん、いいよ……本当は物騒な世の中だしこんなことは言いたかないんだけどね」 「この子達にあんまり見せたくないんだろ。いいよ」 今やここは法律などあってないようなもの。口ではとても言えないような物騒なことが起こることもしばしばあり、自衛の手段は持っておくべきだ……と、ヒナキは考え子供たちに武器を持たせることは反対ではないのだが……風音はそれを断固として拒否している。  こればかりは郷に入っては郷に従え、風音の倫理的価値観に同意せざるを得ないのだ。
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