目覚めの朝

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子供たちと共に家に入ると、この家屋を形作る木の香りが香ってくる。少しばかりの泥臭さはあるが、広く風通しのいいここはこのあたりでも生活しやすい環境にあるだろう。子供たちは靴を脱ぎ散らかし、バタバタと手を洗いに行ってしまう。そんな子供たちの背中をゆっくりと追いながらヒナキと風音は言葉を交わした。  ここの子供たちとの共同生活は大変だろう、まだ孤児は受け入れてるのか、そんな質問をされると風音は決まって笑顔でこう言うのだ。 「それがあたしの役目だからね」 幾度となくその言葉を聞いてきたが、とんでもなく広い器を持つ人だと思う反面、どこか薄ら寒いものを感じずにはいられない事もまた、事実としてあった。  ここはいわゆる孤児院と言うものであり、親を失ったり捨てられたりした子供たちを預かり衣食住を与え勉学を教える……その代わりとして、先程の畑仕事のように様々なお仕事をしてもらっているわけだが。   子供たちが今ご飯を食べているここは広い家屋の中の一室。炊事場から繋がる大きな空間にいくつかのテーブルが設置されていて、そのそれぞれに子供たちが座ってパンやふかしイモをほくほくと食べていた。そのテーブルの一つには元から用意されていた風音の皿と、そして……。 「それひな兄の分ー!」「みんなのから集めたの、たべて!」 子供たちが大好きなお客様のために少しずつ出し合って作った朝食一皿、千切られたパンやイモが入った皿が置かれていて、ヒナキは何とも言えない暖かい気持ちが胸に広がるのを感じつつ。 「お前たちも腹減ってるだろうに……」 ここで朝ごはんを食べてきたと言うのは無粋だと思い、子供たちから食事を奪う罪悪感を感じつつも席に着き、一つまみのパンを口に入れ、おいしい、ありがとうと感謝の言葉を子供たちに向け言った。子供たちは少しばかり照れたりえへんと胸を逸らしたり、それぞれ個性が出る反応を返してくれた。 「メイちゃんが一番多く分けたんだよひな兄ちゃん!」「ちょっ、やめてよたまこー!」 ヒナキは子供たちに随分と好かれていて、それをヒナキ自身自覚しているため、そんな好意を微笑ましく思い、自分に朝食を多く分けてくれたメイに改めてありがとうと言うと、黒髪サイドアップの可愛らしい女の子はぽっと頬を赤らめてえへへと嬉しそうに笑って見せた。
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