目覚めの朝

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 ようやく本題に入れることで安堵したシズルはすぐさま報告事項を頭の中で整理し、言葉に変換する。 「あと15分、本土近海をステルス航行の後、反重力機関を稼働し本土空域へ侵入します。政府軍の攻撃に備えて対地兵器を展開させる許可を頂きに」  そう言いながらシズルは執務机の上、何もない空間に人差し指を置き、真一文字にスライドさせる。人差し指に着けられた、青い光を真ん中に湛える黒い指輪のようなものから光が放出され、物質化。結果として、何もないはずの空中に半透明の薄いモニターが現れた。  そのモニターには、艦と呼ばれているこの場所の全容が光のラインだけで描かれ、展開する兵器がある場所に印がされてある。その下には責任者の証を押し当てる用の窓と、承認を意味するCONFIRMと記されたボタンが浮いている。 「船体下部の武装は展開は抑えねぇとまぁずいだろぉ。こことここ、それとここは格納したままで行け。飛行中のステルス性能が著しく落ちるからよ」  光るラインで緻密に描かれた艦体図の武装部分を指でなぞり、拒否を示すマークが足されてゆく。 「それでは万が一発見されたときに後手に……」 「この任務は政府軍の連中がおかしなことしてねぇか偵察の意味を込めた遠征だってこたぁ分かってるよな。極力発見されねぇようにするのが最重要事項だ……んで、本土に入ったらここ、政府軍が常駐しない集落に降りろ。ここで聞き込みをする」  サージェスはモニターの表示を変え、本土の一部の衛星写真を引っ張り出し印をつけた。そう、今まさにヒナキの居るその集落の場所を。 「ここはさほどうちに敵意のある奴がいるわけじゃねぇ上、支配体制も整ってないからよ」 サージェスは吸い込んだ煙草の煙を細く吐き出しながら、灰皿に先をぶつけて白く燃え尽きた灰を落とす。
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