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「理由が俺にはわからないんだ。わかるか?」
「わっ……わからない。なんでじっちゃんが政府軍に……」
ふるふると力なく頭を振り、風音はそう言ったがこれでヒナキは次に起こすべき行動が決まった。
「わからないなら確かめないとダメだな。子どもたちはここから出さないで。外へ出ないなら普段通り過ごしていいと、そう伝えてあげてほしい」
視線を、普段通りの集落の風景が見渡せる窓の外に向けたまま、ヒナキはポケットからバイクの鍵を取り出し風音にそう言うが、風音は慌てた様子で彼の肩を掴み……。
「ひな坊、それこそダメだ。うちのじっちゃんのためにそんな……」
「うちのじっちゃん、だからこそ」
肩を掴んでいる熱のこもった風音の手をつかみ、ゆっくりと離させてからヒナキは施設を出るため玄関へ。茫然自失の風音はヒナキの背中を見送ることしかできなかった。その後に力なく床へ座り込んでしまい、しばらく自分は何をすべきなのか、祖父は無事に戻ってくるのか、突然知らされた信じられない出来事に対しての思いがグルグルと頭の中で巡っているが……。
「子どもたちはあなたが思っている以上にあなたを頼りにしてる。しっかりしないと子どもたちに悟られて余計な苦労が増えるかも、だな」
「ひな坊……」
一瞥もくれず、ひらひらと左手を上げ宙に泳がせたヒナキはさっさと施設を出て行って、去っていった軍用車の追跡を開始しようとしていた。
出て行く間際の彼の言葉をゆっくりと頭のなかに落とし込み、風音もようやく今自分が何をすべきなのか、きっちり考える余裕が生まれ、足腰を奮い立たせすっくと立ち上がる。
「どんな時でもあたしがしっかりしないとダメだね」
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