目覚めの朝

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 ヒナキが政府軍の車両を追う前、本土へ向かって穏やかな海上を航行していたセンチュリオンノア、本土方面艦隊所属高機動航空戦艦アルバレストは航行システムにプログラムされた命により、本土上空に進行するため飛行を可能とさせる反重力機関を稼働させようとしていた。 「第一第二重力転換炉稼働良好」「第三第四転換炉も良好です」「各重力転換炉完全稼働まであと50%。システム補助を要求します」「ドライバインストール完了、反重力飛行システム起動、稼働補助を開始します」  航空戦艦アルバレスト前面にある艦橋でオペレーターたちが慌ただしくモニターを見ては状況を口々に報告している。その報告を聞きながら、結月シズルは逐一、艦橋中央に浮いている球型モニターに表示された経過に異常はないか目を通してゆく。 「反重力機関オールグリーン、周囲重力波安定、上空安全確認完了。結月少尉、アルバレスト、航行システムに従い飛行を開始します」 「了解しました。アルバレスト各エリアへ飛行警告をした後、本土上空へ進行してください」  シズルがそう言うと、オペレーターの一人が艦内放送を開始する。艦内各エリアに設置されたスピーカーから電子音での開始の合図が放たれた後、流暢な女性の声で警告がされる。 《只今より、本艦は飛行を開始します。浮遊時の重力変化に備え、各員船内へお戻りください。各エンジニアは艦載機の固定漏れが内容確認を迅速に行い、船内へお願い致します。繰り返します只今より――……》  その放送が終わり、しばらくした後にアルバレストは浮遊を開始する。艦内重要区画に設置された球型の各重力転換炉が神秘的な青い光を放ちながら臨界点を迎え、この艦を地球の重力とは相反する力で包む。海面下に沈んでいた船体下部が反重力によって海水を撥ね退け露出し、しだいに上空へ向かってゆく。  そして艦内は急激に低下した重力により、固定していない様々なものが浮き出す。大体の物は船体に固定されてはいるが、スカートを履いている女性オペレーターなどはめくれ上がりそうになるスカートを抑えたり、突然襲う浮遊感に嫌悪感を覚えた船員は顔を青くしたり……それぞれが飛行に際する状況に耐えた後。 航空戦艦アルバレストは上空2000メートルに到達。本土領空へ侵入した。
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