目覚めの朝

24/25
前へ
/27ページ
次へ
「目的高度へ到達、艦内重力調整完了しました。これより本土上空を飛行します……結月少尉は全く動じませんね、私はまだこの反重力機関の影響は慣れませんよ」 「私は慣れていますから」 ちょっとした優越感を覚えつつ、しばらく顔色がすぐれない船員たちを眺めながら、シズルは飛行する艦に展開されたステルスシステムの稼働状況を確認する。 今現在この艦、アルバレストの装甲は物質化光子によって形成された膜によって周囲の景色と同化し視認不可能な状態となっている。しかし艦上部の武装のところだけは完全にどうかしておらず、少々霞んで見えるが目を凝らせば視認可能である。ここは政府軍側に発見され、攻撃を受ける可能性を考えてすぐ使用できるよう武装を展開させてある部分である。  地上にいる人々も、高度2000メートルという低空にいながらこの艦のことは見えない、いるところは青空と雲しか視認できないために騒ぐこともなくいつもどおり生の営みを続けている。  しばらくシズルは近くのシートに座り、デスクに向かってやり残していた事務仕事を片付けていたのだが、突然デスクの上に置いていた通信機から電子音が鳴り出した。何事だろう、そう思いながら通信をつなぐためヘッドセットを装着し、そのヘッドセットの左側頭部側のボタンに触れた。と、回線がつながり結月シズルは平坦な声でなにかありましたかと呼び出しに答えた。 《結月少尉、政府軍の車列を地上に発見しました》 「映像をこちらのモニターへ回してください」 少し離れたところに座っているオペレーターからの通信内容に結月シズルはすぐさま指示を出す。自分のデスクの上に空中に浮かぶモニターを出現させ、アルバレスト下部に備えられたカメラから送られてくる映像を確認した。
/27ページ

最初のコメントを投稿しよう!

49人が本棚に入れています
本棚に追加