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「2台ですか。車列を追いながらもう少し拡大できますか。車両側面の部隊章を確認します」
瓦礫はあるが平坦な荒れた地上を走っている軍用車両の装甲側面に政府軍の部隊章が微かだが確認できたため、すぐにその部隊がどのような役割を持っているところなのかを知るべく指示を出す。
モニターに映ったそれらはいくつかの段階に分けて徐々に拡大され、車両側面の傷まで見えるほどになる。そこに映った部隊章を見て結月シズルは怪訝な表情を浮かべた。
「政府陸軍三課所属分隊のようですね……、なぜ政府軍の人事部隊がこんな辺境に」
《この先は拠点もなく、海岸があるだけなのですがなにか意味でも……あ》
オペレーターが何かに気づいたようだった。結月はすぐに言葉を続けるよう催促し、オペレーターは少し口ごもると結月に許可をもらいプライベート回線に切り替えた。この回線は記録されず、誰に聞かれることもないホットラインになったのだ。
オペレーターは少し声を潜めながら……。
《この進路のまま車両がゆけば、6ヶ月前、偵察巡洋艦が画像を残した海岸線へ行くことになるよ。結月ちゃんが気にしてた画像の男の子と何か関係があるのかも》
プライベート回線になった途端にオペレーターの口調が砕けた。この女性オペレーターと結月は仲が良く年が近いため、誰にも聞かれないこの回線では許せる範囲である。
「まだ彼が私の探している人間と決まったわけではありませんが……」
《それでも気になるでしょ、結月ちゃんが無理言ってまで取り付けた約束事に関わることなんだから。一応車両に乗ってる人員、数、武装は透過解析で調べておくわ。そのデータ、後で送りつけるからね》
「……感謝します。では引き続きお仕事を」
《りょーかいです》
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