花が散るまで

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◆―――――――――――――――――◆ 青い空に、白い雲。屋敷の庭では、春の陽気に花が咲く。 そして、足元には──頭から血を流した自分。 「…………」 綾小路吉乃(アヤノコウジ ヨシノ)は思わず、二度見した。 通った鼻筋に、薔薇色の唇はやや厚めで、艶やかな長い黒髪。白い肌には、赤い血が生々しく散っている。 「これ、私よね」 何度見ても、これは自分だ。 真紅にレースのワンピース、白いハイヒールという格好も同じで、つまり、自分だ。 吉乃は額を押さえて、ため息をついた。 記憶が不明瞭で、よく覚えていないが、よほど疲れていたのだろう。 「こんな夢を見るなんて、重症だわ」 「夢じゃありませんよ、お嬢様」
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