花が散るまで

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突如、響いた声に、吉乃は振り返る。 そこには、黒いトレンチコートを着た青年が立っていた。 彼は、中性的な美貌で微笑み、吉乃を指差す。 「貴女は、幽霊になったのです」 「は?」 更に、頭が痛くなってきたわ。確か、大富豪である綾小路家には、警備も番犬もいたはずだが。 困惑する吉乃に、青年は何故か得意げに胸をはる。 「僕が誰か、訊きたいでしょう」 「えぇ、名前と住所を教えて下さる? 不法侵入で警察にお話するので」 薄く笑うと、彼は勢いよくコートの前を開いた。同時に、吉乃はフリーズする。  全裸、だった。 「僕は魂の案な──」 「きゃぁぁあああ! 変態!」 振り上げた手が、良い音を立てて、青年の顔面に直撃した。
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