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しっかりと、綾瀬さんを間近で見据える。
綾瀬さんの綺麗に形取られた目が、私の目の前にある。
「さっきのあの表情、簡単に見せたら駄目ですよ。女性はあの表情に弱いですから」
「それは佐倉さんも?」
距離が近いのに、綾瀬さんも間近な距離から私を見つめ返す。
「…どうでしょう?少なくとも、簡単に見せてはいけないと思うくらいにはなりましたよ」
「それは残念」
綾瀬さんは立ち上がって、上から私を見る。
「レモンティー、ごちそうさまでした」
「どういたしまして」
惚けるような笑みと、低くも甘い声、そしてレモンティーを残して綾瀬さんは私の前から立ち去った。
私が思う、綾瀬さんに対する”苦手”は、普通の苦手と少し違う。
普段は普通に話せるのに。
不意に苦くなる時があって、その時は目すら合わすことができなくて、息苦しくなる。
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