王子の噂と、自分の気持ち

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営業部から異動になって、もうすぐ1ヶ月が経とうとしていた。 だいぶ仕事にも慣れてきて、比較的落ち着いた毎日を過ごしていた。 そんなある日。 部長が会議から戻ってくるまでの間、他社の方と今季の地価数字に関して話をしていた。 色々な人と話して慣れさせようとすることが、きっと部長の狙いなのだろう。 地価数字なんて、営業部の頃はそこまで気にしていなかった。 でも、事業部に入ってからはまずそのことを徹底的に叩き込まれた。 「あ、もうそろそろ帰ってくる頃ですね」 話に花を咲かせつつ、端目で会議室を伺うと、ぞろぞろと会議室から人が出てくる。 その中には、部長や綾瀬さんの姿もあった。 「では、そろそろ来られると思うので。また今度、ゆっくりお話ししましょうね」 笑顔を向けて、席に戻ろうとした時。 「ちょっと待って」 どこか焦ったように、後ろから呼び止められた。 「今日の夜、ご飯でもどう?」 今さっき知り合ったばかりの、私より若干年上に見える男性、関川さん。
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