プロローグ

2/2
4388人が本棚に入れています
本棚に追加
/623ページ
誰もいない、真っ暗な部屋。 唯一分かるのは、室外から少しだけ入る光。 暗い部屋は、今の私にはピッタリな場所。 恋なんて、私には必要ないもの。 あの日から、私の恋をする心はストップしたままだった。 本心は、誰にも見せることはないし、開けない。 そう思っていたのに。 「なんで……」 どうして今、こんなにも泣きたくなるんだろう。 どうして、今更欲しいと思ってしまうんだろう。 彼が誰にでも向ける、決して独占することのできない暖かい眼差しも、穏やかな笑顔も。 どこへ行っても、どこにいても私に向けて、笑いかけて欲しい。 その気持ちを、どうしてこんな時になって分かってしまうんだろう。 恋はいつも間に合わない。 私はまだ 傷つく覚悟も、恋をする覚悟もできていないのに。
/623ページ

最初のコメントを投稿しよう!