第1章

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 真っ暗やみの中で、見えるかどうかの道を進む。街灯が一定の間隔で設置されているが、明かりはやけに弱々しい。自分の目を信じながら橋を渡ると、正面の二つの塔の全貌が見えるようになった。 二つの塔は通りの道を挟んで建っているが、左手の塔はやや奥にある。その塔はもう片方に比べて高いが、幾分かは細い。しかし低い塔よりも圧倒される感覚は凄まじい。高い塔ばかり目立ってはいるが、低い塔だって重厚感は存在する。周りの建物から高さで郡を抜きんでている二つの塔は、神秘的であり文明的に思えた。塔に近づく大通りに面している建築物は、今のところ塔以外確認できない。接近するにつれて塔の存在感に圧倒されるとともに細かい部分まで見えるようになった。塔の表面にはたくさんの窓とベランダが規則的に並び、中には飾り付けているところもある。遠くからでは見えなかったが、微かに光をつけているのもあるようだ。ただし、ついている光のほとんどは妙に弱く、生活感を感じさせるほどではない。  レルヒは街灯に薄らと照らされながら、一人で塔へと進む。恵まれない環境に育った彼でも、ここまで来るには何人もの人々に少しずつ支えられてきた。時にはくじけそうにもなったが、やっとここまで来たのだ。そういった意味では、もしかしたら恵まれていたのかもしれない。  レルヒが袖を通している半袖のシャツは汗で湿っている。自分でも緊張しているのが分かった。  低い方の塔の手前を囲う百五十センチ程度の壁に沿って歩いていくと、壁の途切れた部分に差し掛かった。言うまでもなくそこは塔の正面だ。真正面にはロータリーがあって中央には背の高い樹木が植えられている。ロータリーの先に玄関があった。  ロータリー……壁の内側へ踏み出す前にレルヒは目を閉じてそっと深呼吸する。深呼吸が終わってから静かに目を開けると、真剣な面持ちで一歩を踏み出した。  暗かったがために見えなかったが、ロータリーを抜けて玄関部分に入ると、塔の中に入る前で五、六人の人だかりが目に入った。  「おぅ。来たか」  その中の一人の男がレルヒを見るや手招きして呼んだ。呼ばれたレルヒは状況を悟って駆け足で集団に混ざる。
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