第1章

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僕は彼女の手を握り、急いで階段を上った。 上のフロアは隣のビルと繋がっていて、そのビルの二つの入り口の一方は裏の通りに出られるようになっている。 僕は彼女を連れて裏の通りに出た。   「そいつは居ないかい?」 僕のコートの陰に隠れるようにしていた彼女はそうっと通りを見て、ほっとしたような顔をした。 「大丈夫みたい」 「よかった。でもとにかくここを離れよう」 すぐ近くで客待ちをしていたタクシーに手を上げて呼び、彼女に乗るように言った。 タクシーが動き出してやっと人心地がついた。   「君の家まで送るよ。どこ?」
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