第1章

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「いいよ、気にしなくて大丈夫。それより君、名前は?」   「市井絢と言います」   「僕は高宮笙です」   「高宮さん、助けてくれてありがとうございました」 彼女はあどけない顔で笑った。 部屋の前でドアを開けながら、   「殺風景ですまないけど、どうぞ」 と声を掛けた。 そのまま僕はリビングへ行き、エアコンのスイッチを入れたが、彼女が入ってくる気配がしなかった。   「どうぞ」 もう一度声を掛けながら玄関に迎えに行くと、彼女は気まずそうな顔をして佇んでいた。   「どうかした?」
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