第1章

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「あの…もしかして一人暮らしなんですか?」   「ああ、そうだけど。それがなにか?」   「私てっきり家族がいらっしゃると思って…独身とは思わなくて」 考えてみれば、そうである。 見ず知らずの男の一人暮らしの家に、容易くついてくるはずはないのだ。 まして、若い彼女から見れば、僕は“妻子持ちのおじさん”にしか見えなかったのだろう。   「すまない。まったく気にしてなかった」 僕がそう言うと、彼女は何か気に障ったのか、   「まあいいです。あなたいい人そうだし」 とちょっと不機嫌に言った。
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