第1章

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榊が言いかけた言葉を、遮るように口を挟んだ。  「その先は言わなくて結構。今夜は、静かに飲みたいので」 榊は僕をじっと見つめて、   「ふーん、そうなんだ」 と妙に納得したように呟いた。   「笙さんでも上手くいかないことがあるんだね」 榊は職業柄街の情報に詳しい。 おそらく、僕が数か月前に同じ会社の女性と歩いていたこととか、食事したこととか聞いていたんだろう。 そして、僕の様子からその彼女と別れたことも見抜いている。
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