第1章

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急に落ち込んだ気持ちを引きずりながら帰ろうとした時、下から急ぎ足で駆け上がってくる足音がした。 見ると、ダッフルコートの若い女の子が長い髪を振り乱しながら走ってくる。… そして目の前に来たっと思った瞬間、どんっと彼女は思い切り僕の胸の中に飛び込んできた。   “…っ!” よろけた僕は倒れそうになりながら、それでも腕を伸ばし壁に手をついて体を支えたが、そのはずみで眼鏡が床に落ちた。   「ごめんなさい」 胸の辺りで声がした。   「助けて。嫌な奴に追われてて」
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