眠る守護

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「守護契約は切れてます。今後、叡智が人間に危害を加えない限り、どこにいようと連城家が動くことはありません」  小夜子が昭人から花瓶を受け取った。 「そう……。なら、自由にさせていただくわ。叡智はそれでいいのね?」  花瓶を見て言った。  叡智は出てくるのが面倒だったのか、ひらりと葉を揺らす。 『昭人がいいなら、あたしは構わないわ』  小夜子がそのタイミングでこっちを見た。 「あー、やっぱ小夜子さん……って」 「かわいい桜ね、この子」  わざと話題を変えたのがわかった。 「や、それは……」  呼ばれたのに気づいたのか、ちいさな思惟がぼんやりと葉陰に現れる。 「よかったら、この子も一緒に預かっておくわ」  小夜子の顔をじいっと見て、消えた。 「……えっ、あ……、お願いします」  広希は口を挟んでこなかった。
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